浮世絵コンシェルジュ 畑江麻里

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【日本フェノロサ学会 研究発表】 無事に終わりました!

2018年9月28日(金)東京藝術大学にて開催された日本フェノロサ学会での研究発表「高見澤遠治と大正期「複製浮世絵」の勃興」が無事に終わりました!

会長からお褒めのお言葉をいただき、意外に好評だったので本当に嬉しかったです・・・

 

 今回の発表で取り上げた高見澤遠治(1890~1927)は、江戸以来の高度な木版技術により、大正期に優れた複製浮世絵を制作した最たる人物です。

 遠治はあまり知られていませんが、日本文化の保護、育成に生涯を捧げた吉田幸三郎(1887~1980)から「浮世絵保存刊行会」という会員制の複製浮世絵の頒布形式の制作をすすめられ、この刊行会の会員となり遠治の複製浮世絵を多く蒐集し、親友にまでなった岸田劉生(1891~1929)からもその技術を高く評価された人物でした。しかし遠治は、晩年に松方幸次郎の浮世絵コレクションの復刻浮世絵の制作に抜擢されたにも関わらず、それを手掛けることがかなわないまま36歳という若さで死去してしまったこともあり、現在では正当な評価をされることなく忘れ去られた人物になってしまいました。

 

以下は学会で話した内容の一部と、レジュメなどです。


  今回も会長はじめ多くの先生方が学会誌への投稿をすすめて下さり大変恐縮しています。。

 

■先行研究と問題の所在

 高見澤遠治の経歴やその記録については、遠治の弟の娘である高見澤たか子氏によって詳細に伝わっていますが、遠治の制作した複製浮世絵やその仕事については、岩切氏が指摘するように、誇大的に遠治の様々な伝説が広まり彼の仕事の全貌が不明な事、遠治の仕事の全貌である展覧会が開かれたことがなく、遠治の作品であると確実にわかるものをこれまで見ていないこと、遠治のものと判定することが難しいことなどが指摘されており 、未だ遠治の手掛けた複製浮世絵についての研究論文はなく、遠治研究は全く進んでいないのが現状です。

 そこで、本発表では、高見澤遠治と彼が手がけた複製浮世絵に焦点を当て、遠治の複製浮世絵の存在意義について追求します。そして、吉田幸三郎や劉生との関係や当時の研究者たちの遠治の評価に留意しながら、複製浮世絵が勃興した大正期において、高見澤遠治は、一時代の複製浮世絵界を支えた存在として認知すべき、重要な人物であることを提示することを目的とします。さらに、吉田が大和絵同好会を企画し、大正8年より絵巻物複製の刊行に当たり、水準高い複製類の出版を行ったのは、遠治と組んで行った複製浮世絵が影響を与えた可能性も指摘します。