浮世絵コンシェルジュ 畑江麻里

学会誌『LOTUS』第67号(日本フェノロサ学会刊)に研究論文が掲載されました

春風の心地よい季節になりましたが、皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。
私ごとではございますが、昨年秋に日本フェノロサ学会にて研究発表をした論文が学会誌に掲載されました。


約8,000点ものビゲロー浮世絵コレクションの歌川国貞(三代豊国)の数量分析は、とても長い道のりでしたが、掲載された論文を見ると喜びはひとしおです。
初めて掲載される論文のため、至らない点も多いかと存じますが、ご笑覧頂ければ幸いです。

~研究論文内容~
本稿では、ボストン美術館蔵ビゲロー浮世絵コレクションの浮世絵を取り上げ、蒐集者ウィリアム・スタージス・ビゲローが最も多く、歌川国貞(三代豊国)の浮世絵を蒐集した経緯を検証しました。
国貞は生涯に万を越える膨大な作品を制作したため、その内訳や詳細については深くは検証されていません。特に、ビゲローが国貞作品を蒐集した経緯の検証は行われておらず、未だ大きな余地があります。
そこで、ボストン美術館のデータベースで公開されている国貞の約8,000件の浮世絵版画、肉筆、絵本、版本等を全て確認し、各作品に付された作品番号、作品タイトル、年代、版元、署名・改印、作品の伝来、コレクター、等を元に一点一点調査した上で、ビゲローが蒐集した浮世絵版画のみをそこから抽出し、その傾向を数量的に分析しました
分析の結果浮かび上がった、ビゲローコレクションにおける国貞の浮世絵の特徴を報告し、そこから見えてきたビゲローの真の蒐集動機を執筆しました。

※第二章で取り上げました、歌川派絵師の名前が並んだ評判記『當代全盛江戸高名細見』(嘉永6年刊)の原本の所蔵先は、都立中央図書館です。
この評判記には、「豊国にかほ(似顔)、国芳むしや(武者)、広重めいしよ(名所)、清満かんばん(看板)」と人気絵師26名が続く内のトップに豊国を襲名した国貞の名が記されており、当時の浮世絵界が国貞を柱としていたことが判る大変貴重な資料です。原本の画像は、論文規定の関係で掲載できず少々残念でしたが、またの機会にご紹介します。